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「ドシロウト」が語る,ラーメンへの熱き想い 【2003/04】

僕のお薦めラーメンベスト5→うまいラーメンの本質とは

日本テレビ・金曜深夜に放映している「三宅裕司のドシロウト」と言う番組がある。各テーマに沿って「日本全国の全くの素人」をスタジオに呼んで,「一流芸能人」がその素人さんを囲むようにして話を聞こうと言う番組。基本的に山口放送制作の番組のようだが,作っているのは「音楽寅さん」(桑田佳祐が出演した画期的な番組だった)や「ぷっすま」等を制作しているケィマックスというユニークな制作者集団の会社。

その担当者から「HP拝見しました」とDMで出演依頼交渉が来たのが2月初め。「ラーメンマニア」というテーマで番組をつくるのでスタジオに来てもらって,三宅さん,東野幸治さん,オセロさん,吉岡美穂さんと話をしてもらえないかというのだ。三宅裕司と「ゲスト」として話せると言うのも面白いし,アデランスのCMに出ている今が旬の吉岡美穂を拝めるのも魅力的かなとその気になって,その会社(東京タワーの真下にある)までのこのこ出かけて,ビデオカメラに映されながら事前取材を受けたのが2/16のこと。もちろんラーメンを2杯ほど(すぐ近くにある「笑の家@南麻布」とか)食べてから行ったのは言うまでもない。結局2時間以上その事務所にいたが,取材だか雑談だかわからない内容。だって話すのはひたすらラーメンのことなのだから・・・。

先に断っておくが,結果として僕が出演することはなかった。なんでも「ラーメン本を出したり新聞に載ったりしたことが『ドシロウト』らしくない」と言うのだ(僕自身はビジュアル的に辛かったのではないかと思っている・笑)。ちょっと残念。実はHP開設以後,今までTV収録の話が8回ほど来たのだが,内容は「ラーメンを食べ歩く変わった家族」とか「実際の店に行ってコメントをする」とか言うもの。こういうHPを主宰していて何なのだが,家族を前にしてラーメンについて人に語ったり,個々の店についてTVでコメントするなんて「大それたこと」は実際には苦手なのである。

ただラーメンが好きなだけ。

1999年4月のHP開設当初はその「ラーメンに対する想い」だけを書いていて自己満足していたのだが(>「はじめのラーメン論」参照),行きがかり上そのうち個々の店についてのコメントも書かざるを得なくなってきただけなのである。ただ,ラーメンに対する熱い想いは昔も今も変わらないので,一般論としてラーメンについてしゃべることが出来るならと,初めて実際にTVに出る気になっていたのだ・・・。

実は,ちょうどこの同時期に大阪よみうりTVの女性ディレクターからいきなり自宅に電話があり,仁鶴の「大阪ほんわかテレビ」)と言う人気番組(日曜の夜10:30に放映しているらしい)のコーナーに家族で出て欲しい,取材撮影に大阪から向かうとけっこう強く(関西弁で・笑)懇願されたりもした。が,関東で放送されないのでは面白くないので丁重にお断りしたばかりだったのだ。同時期に2つの番組に出るのは,人並みにプレッシャーに弱い僕(&家族)としてはちょっと負担だったから。

結局,全8回のうち断らなかった2回の企画が流れている(>「顛末記」参照)。僕はやっぱり「映像」には縁がないのかなと・・・

でもHPのネタ的にはいい経験が出来た

番組自体は,4/25(金)に他のマニアの方の出演で無事放送された(>「ドシロウト」の「放送内容(2003/04/18)」参照)。國學院大出身の若い神主さんで,ビジュアル的に僕より数段いいので「あぁなるほどな〜」と思わず納得。一般の視聴者にはこういう若者の方が受けがいいよななどと,あれこれ番組を分析しながら,まるで自分のことのようにドキドキしながら視ていた(笑)。今までTV番組をこんなに身近に感じたことはなかったもの。

と言うわけで,その事前取材の前にDMで来たアンケートへの返信をそのままここで公開しようと思う。実際の番組でもこれらの質問に沿って番組が作られていたので(たぶん質問の進行表とかが出演者の目の前で示されているのだろう),もし僕が出ていたらこういう答えをしただろうと言うことで。

これは今までの25年の食べ歩きの総括

「ドシロウト」のラーメンに対する熱い想いが伝わればと・・・。

※基本的にHP内に散在するコンテンツをコピペし,加筆したもの・リンクは原文でも貼ってある

Q:食べ歩きのきっかけは雑誌の特集からということですが,なぜはじめようと思ったのですか?

1977年に進学のため茨城から上京。朝夕2食付の寮に住んでいたので,昼食だけが外食。もっぱら学食で200円のカツカレーが定番でした。せっかく東京に来たのだからたまにはうまいものでも外で食べたい。でも金は無い。安くて旨くてあきないもの,それがラーメンでした。さいわい大学が京王線と井の頭線が交差する所にあり,渋谷・新宿・下北沢・吉祥寺・・どこへ行くにも便利だったんです。>「1978年当時の有名店

Q:はじめた当初まわりの友人反応はどうでしたか?当時のラーメンの社会的地位は?

誰かに伝えたくなればネットに投稿できる今と違い,25年前に食べ歩きを始めた頃は,何もなかったです。「angle」の余白に「チャーシュー2枚小さめ」なんて書き込んで,友人から笑われました。県人寮にいたので,年に1度の文集に初めて食べ歩きを発表。1979年(昭和54年)の冬,大学2年の終わりの頃でした。その題名が「どんぶり一杯の幸せ」。口もきいてもらえないような先輩から「ラーメン好きなんだねえ」とよく声をかけられました。そのうれしさが,今のHPにつながっているんだと思います。>「1979年の『どんぶり一杯の幸せ』

1980年当時も「大勝軒@永福町」「大勝軒@東池袋」「ラーメン二郎@三田」あたりは行列でしたから,人気のある店は今と同じに並んで食べるものでしたね。今はその規模が何倍にもなったと言うことでしょうか。あと若い女性が並ぶなんてことは昔はあまり無かったように思います。>「人気ラーメン店の行列についての一考察

Q:いつ頃から本格的にハマっていったのですか?(きっかけなどあれば)

1978年の「angle」掲載店75店を1年半かけて制覇したあとは,人並みに勉強(資格試験)をしていた時期があって,ラーメン的には気に入った店に通う程度だったんですが,勉強に一区切りついた頃に札幌に行く機会があって,「味の三平」を食べたり(味的には???だった・むしろ旭川で食べたラーメンの方がうまかった),TVで荻窪ラーメンブームになったり(「愛川欣也の探検レストラン」で持ち上げた「佐久信」が有名>「春木屋@荻窪」の項参照),喜多方ラーメンブームで喜多方に行ったり(まこと食堂)していました。東京でも,次は博多だと,環七の「なんでんかんでん」が話題になったりしたんですが,食べ歩くと言うほどには店がそろっていなかったように思います。たまにTVとか雑誌で話題になった店に行っても「ふ〜ん」と言う感じで,結局昔からの店(喜楽ホープ軒春木屋)に戻っていたんですね。休みに上京して気晴らしをするのはその頃から普通のことでしたから(笑)。

ちょうどHPを始めた頃(1999年4月)に,TVチャンピオンでラーメン王になった人(=石神秀幸)のラーメン本(「ラーメン王」・1998/12)が出ていて,その掲載店がそれまでの情報誌に比べるととても粒ぞろいで,また掲載店を制覇してみたくなったわけです。もっとも今にして思えば,その情報の大元は,「とらさん会議室」とかの掲示版に出ていた情報を集めた本と言うことなのかなと思いますが,情報をずっと追い求めていた僕には画期的な本でした。それからは,マスコミ的にもネット的にもあとからあとから話題の店が続出する状態で,いくら休日にせっせと食べ歩いても(>「食べ歩き日記」参照),今ではまるで追いつかない状態です(笑)。

Q:思い出の一杯ってありますか?(何杯もあるかもしれませんが…)

1999年の4月にラーメンのHPを始めて急に世界が広がった直後,「本場博多の屋台ラーメンを食べてみたい」と呟いた妻の一言で思いつきで強行した「西日本横断ラーメン強行軍」で,深夜0時過ぎに食べた「しんきろう@天神前」。

その博多からの帰り道に寄った和歌山でまず1杯食べて,連休の最終日だから帰宅時間を考え午後1時に大阪へ向けて出発したものの,本命の「井出商店」(午後3時から営業)への想い断ち切れず,岸和田 ICでUターンして和歌山へ戻って(妻あきれる)行列して食べた「井出商店@和歌山」。

2002年の連休。金曜の夜に自宅を出て,東北道〜青函連絡船で北海道に渡り,小樽や札幌で有名ラーメンを食べつつも,その日の夜には稚内・宗谷岬まで走破してしまった「北海道一周・縦横無尽のラーメン行脚その帰り道に寄ったのが「のんきや@夕張」。傾きかけてるどころではなく,完全に傾いて後ろの土手に寄りかかっている物置小屋のような店構え。腰が完全に曲がったおばぁちゃんが狭いカウンター内でつくるまさに『魂の一杯』でした。

Q:数多くお店を回ってらっしゃいますが、常連・馴染みの店などはあるのですか?(店の主人と顔馴染など…)

家族の定番は地元水戸の「えぞっ子@五軒町」なのですが,これはあまりにローカルですね(笑)。僕自身は昔から店の人とあれこれ話すのが大の苦手で,馴染みとか常連とか言う店はなかったのですが,それでも学生時代に通い詰めた「喜楽@渋谷」や「さぶちゃん@神保町」とかで顔を覚えられていたりするとうれしかったりします。学生時代,いつも通りタンメンを頼むと「ライスは?」とにこっと笑って聞いてきた「喜楽」のヒゲの職人さん(今もいます)。馴染みの店なんて無かった僕にはそれだけでもうれしかったです(>「喜楽@渋谷」)。15年ぶりくらいで再訪したら,当時注文以外口をきいたこともなかった普通の客だったのに「久しぶりだね」と低い声で言ってラーメンを差し出してくれた「さぶちゃん」。懐かしい気分でした(>「さぶちゃん@神保町」)。

昨年(2002年)の日テレの「ラーメンベスト100」(1回目)で初代チャンピオンになった「大喜@湯島」。開店した頃(1999年)はネット仲間では話題になっていたものの一般的にはまだ無名店。ちょうどその頃,僕自身のHPが写真誌「フライデー」の取材を受けて(>「マスコミの軌跡」参照),「まだマスコミに取り上げられていない新しい店でおすすめの店も教えてください」とのことで紹介したのがこの店。その直後に訪ねたら顔を覚えていてくれたご主人に「水戸の方ですよね?紹介ありがとうございました」と丁寧に深々と御礼をされました。でも日曜の午後6時で客は僕一人(笑)。それが今では各マスコミ(特にTV)の影響で整理券を配るような大行列店。日曜の営業をやめてしまい僕は食べられなくなって複雑な気分です(笑)。

Q:ラーメンブームと言われる昨今ですが、なぜここまでのものになったと思いますか?

自分なりの持論があるのですが(>『ラーメン論・序論』),HPを始めて一般の人(マニアでない人・友人とか親戚とか)と話をして感じることは,みなラーメンについて『語る』と言うこと(笑)。自分はちょっとこだわっているよと言う人がいかに多いことか。結局,安価で身近にあって味的にコメントしやすい気軽さが要因でしょうね。洋食でも和食でも高い食材使えば美味いのが当たり前,ラーメンはあの程度の値段で競争があるからすごいと思うのです。庶民の味と言われるほかの物,例えばカレーでも丼物でもこだわっていけばどんどん高級品になっていく。よくありますよね,2500円の老舗の天丼とか,ルーとライスだけで2000円ぐらいするカレー専門店とか・・・美味くて当たり前,まずくても普通だったら頭にくるか,自分の味覚が低級なのかと思ってしまう。もっと高級(といわれる)料理だったらなおさらです。ラーメンにはそれがないからいい。だいたい500円から700円くらいで食べられる。うまけりゃ得した気分になり,まずくてもこんなもんかと思うだけ。「こんな味で600円もとりやがって・・」とまでは思わないでしょう(>「はじめに-はじめのラーメン論」参照)。

「なんだ行列かよ〜」と言いながら並んで食べて,「並んで食べたけど〜だね」なんて一応言ったりするのが老若男女を問わず話のタネとして最適なんでしょうね。「あそこの〜寿司(フランス料理とか)はエラく高いけどうまいよ」なんて言われても「じゃぁ早速今晩行ってみよう」と言う展開にはなかなかならない。いつか行くことがあるとしてもラーメンほどに反応は早くないでしょうし。

もちろん過去もブームはあったのですが(古くは「札幌」「荻窪」「喜多方」「博多」等々),僕自身の印象では,1990年代後半になって「青葉」「武蔵」「くじら軒」と言った,それまでの主流だった老舗で修行して独立する『職人系』の店と一線を画した『独学系』の店が出現したことが,まず今の大ブームのベースにあるのだろう思います。一方,ラーメン情報と言えば,ほんの数年前までは口コミとか「タクシーの運転手おすすめの店」と言う基準でしか紹介されなかったのが,インターネットで即時に情報が流れるようになって,開店間もないのにあっという間に行列店というのが珍しくなくなり,それは商売としてオイシイと,才能ある個性ある若手の店がどんどん出てきたこと,それがネットでまた流れて行列が出来て,それを雑誌・ラーメン本がこぞって取り上げTVが特番でバ〜ンとぶち上げると言う構造から,今のラーメンブームがあるのだと考えます。

Q:食べ歩きを辞めようとか辛いと思ったことはありますか?(変わった体験などもあれば…)

辛いなんて言うことはありませんが,1日に6杯食べて「オレはなんでこんなことやっているんだろう?」と日曜深夜の青山通りで苦笑することはありますね。妻には月曜は麺類は食卓に出すなと厳命してあるのですが,それでも2〜3日でまたラーメンが食べたくなります。こんな僕は異常でしょうか(笑)。

Q:食べ歩きをしていてうれしいときはどんなときですか?また過去のエピソードで一番うれしかったことなどがあれば…。

苦労して(遠路はるばるとか大行列とかで)訪ねた店で,最初の一口食べて「おぉ〜」とひとりほくそ笑むとき,これ以上の幸せはありません。まさにこれが『どんぶり一杯の幸せ』(笑)。

家族的にはそれまでただ単にラーメンを家族で食べていたのに,HPを始めてその意味づけが出来て(?),雑誌・ガイド本に自分のHPが紹介されたり(>「マスコミ紹介の軌跡」),茨城新聞社から出たラーメン本に関わったりして(>「茨城のうまいラーメン」)父親の権威(?)を上げたことでしょうか(笑)。

そして何よりも2002年に朝日新聞に取り上げられて(>「ラーメンはときめき」)この先,どんなに努力しても,まず全国版の新聞の一面を顔写真で飾ることはない『普通の人生』を送るであろう娘達に(笑),大変貴重な家族の思い出を作れたことでしょうか。この記事のあと,家族でのTVの出演依頼が続けてきたのですが,こちらの都合もあってすべて流れてしまいましたが・・・(笑)。

Q:行列を体験されることもしばしばでしょうが、最高はどのくらいまちましたか?待ち時間は何を考えていますか?

20年前も今も変わらぬ大行列の「大勝軒@東池袋」,1時間半くらい並びますね(この店はそれが普通です)。「新横浜ラーメン博物館」が開館した当時も,各店(5店くらい)を1時間以上並んで食べるの繰り返しでトータルでは丸1日並んでばかりでした。

待ち時間は,昔なら「どんな味だろう」と思いをはせ,今なら「どういう風にHPに面白おかしく書こうか」と言ったところでしょうか(笑)。

Q:ラーメン通で得したことってありますか?(女性にモテるとか…)

ネットは顔の見えない文字だけの世界ですから,普段接点の無いような世代の若い女性の方なんかに,自己紹介して,「あっ,HP読んでいます」とか言って喜ばれるのは気分がいいものですね。狭い世界ですが,作家に会うような感覚なんでしょうね。つまり容姿とか年齢とか関係ない世界(笑)。地元の女性4人を連れて東京の有名ラーメン店巡りをしたこともありましたし。>「水戸の大奥ご一行様,花のお江戸でご満悦」ツアー

あと何よりも,しっかり田舎に住んで地味な仕事をやっているのに,こうしていろいろなマスコミの方々から取材とかを受けて,平凡な人生に彩りが出来たことでしょうか(笑)。

Q:ラーメン店マイベスト5を教えて下さい。

今の話題になるような店は,昔と比べるとレベルが格段に高くみなお気に入りなのですが,食べたくてもなかなか食べられない店として「大勝軒@東池袋」「ラーメン二郎@三田」「さぶちゃん@神保町」「青葉@中野」「大喜@湯島」あたりでしょうか。青葉なんて1998年頃は,日曜の夜9時に行っても並ばずラクに食べられたんですけどね・・・。

Q:普段のお仕事はどんなことですか?(苦労話などあれば)

○○○と△△を経営しているのですが,ラーメンとは全く関係ないプライベートなことなのでそのあたりは秘密にしておこうかと(笑)。

Q:宝ものはありますか?

ラーメン的に言えば,もう手に入らないと言う意味で,前述の「朝日新聞」の実物でしょうか。娘の嫁入り道具と思っています(笑)。あとは各地の食べ歩きの家族の記念写真とその時の『記憶』ですね(笑)。

Q:やってみたいこと、夢などはありますか?

とりあえず,未踏の「九州一周ラーメン行脚」でしょうか(笑)。そのあとは沖縄?そしてハワイのラーメン,ヨーロッパのラーメンとか?(笑)。ネット上の知人にはこういうHPを主宰している方もいるんです。

http://www.worldramen.net/(BONさんの『World Ramen Net』)
http://www.worldramen.com/(はんつ遠藤さんの『世界のラーメン情報』)

インターネットの世界では,情報はなんでも手に入りますよね。

収録自体は東京のスタジオで行われる。予定通りなら3/20(木)の午後だったはず。4週分(4回放送分)の4本撮りで,各々の回の収録に1時間ほどかかると言っていたから,実際に各回で放映されるのは収録した分の3分の1ほどだろうか。スタジオにセットされたソファに横並びに座って芸能人に挟まれて話すことになる(>放送内容(2003/04/18)の写真参照)。観覧希望の観客の前で話すわけだから,カメラだけの場合より緊張するのは明らかだろう。僕が出ていたら完璧にあがってしまったろうなぁ(笑)。

実際に放映された内容を一応再現してみよう。

出演した若い石山さんが,進学のため青森から上京してラーメンにハマるきっかけとなった店は「横濱家」とのこと。神奈川でチェーン展開していることもあり,家系としてはネット上で話題になることはあまり無い店なのだが,上京して初めて家系に接したのがこの店だからだとすれば,その気持ちはよくわかる。僕自身は10年くらい前の「こうや@矢口渡」が家系との出会いだったのだが,やはり衝撃的だったからだ。その「家系ラーメン」の話で「とんこつ醤油」の説明になれば,「和歌山ラーメン」との違いを聞かれ,「鶏油」の話になれば「背脂のことか」と質問が入る。やはり芸能人の方も断片的な知識はそれなりに持っているのであり,かつ何か一言コメントを挟もうと常に狙っている話芸に秀でたプロの面々の訳だから,たった1人でそれを相手にするのは大変だよなと同情。ラーメンについて,相手に納得いくような説明を一般的な言葉でするのは案外難しいものなのである。

次は,出演者が好きな店を言って,その店を知っているかどうか試すことになる。まずオセロの松嶋さんが赤坂にある「かおたんラーメン」の「鶏ラーメン」を。「かおたん@青山」は僕が学生時代に一番通った「喜楽@渋谷」に1977年当時いた森山さんが独立して出した店と言うこともあり,もちろんはるか昔に食べている。が,赤坂にも店があることは知らなかった(汗)。三宅裕司さんが選んだのは「はしご@銀座」の「支那麺」。この店は「坦々麺」が有名で10年くらい前に食べている。当時よく話題になっていた有名店である。吉岡美穂さんが選んだのはは「彩華@天理」。これは一昨年,天理教本部の真ん前の店で食べたばかりだ(>「関西のラーメン」)。

さらにラーメンの歴史の話題(来来軒とか水戸黄門とか朱舜水とか・・これは僕も聞かれるだろうなと思っていた)を経て,「うまいカップラーメンは」との質問。「ちゃぶ屋@護国寺」の名前で出している「SIO RAMEN」(とんこつ塩柳麺・明星食品)を薦めていたが,ダシパック入りのこのカップ麺,ラーメン仲間では非常に評判のいいものであり納得。

さて,上のアンケートでも聞かれた「ラーメンマニアが薦める店・ベスト5」。番組内で石山さんの選んだ「ベスト5」は5位:「緑や@池袋東武」,4位:「せたが屋@世田谷」,3位:「創家@高円寺」,2位:「渡なべ@高田馬場」,そして1位が「多賀野@品川」。新人コントグループ・「WAGE」(ワゲ)のメンバーがその店を食べる映像を流すと言うのも予定通りだった。個人的には,5位の「縁や」はまだ全然空いていた昨年の12月初めに食べたのだが,全然ピンと来なかった。でもこれは多分好みの問題だと思う。事実,僕の知り合いの「マニアでない人」は絶賛していたし・・・。「創家」については「家系」としては標準的なものと言う印象なのだが,これは近所とかそう言うことなのかしら。残りの3店については,順位はともかく納得できる選択だと思った。では僕だったらどう答えたか。

考えてみれば,ラーメンマニアに好きな店を選ばせ,且つそれに順位をつけさせると言うのは実に酷な話。東京の店を選ぶ場合は特にそうだ。食べても食べても有力な店があとからあとから出てくるここ数年の東京では,おすすめを選べと言っても,あまりにその選択肢が多いのである。マニア的に言えば半年も経てばその好み(=順位)はガラッと変わってしまうのが普通。いくら好みの(=おすすめの)店を選んでも半年も経てば迷いが出てくる。そんなわけで,僕の場合は上の返信の通り「大勝軒@東池袋」「ラーメン二郎@三田」「さぶちゃん@神保町」「青葉@中野」「大喜@湯島」を選んだ。みな行列店ばかりで,しかも古い店が多いが,それは一般の人に勧める「うまいラーメン」の考え方による。

思うに,うまいラーメンの本質はまた食べてみたいと言う衝動どれだけ多くの人に,かつ長期に渡って与えられるかにあると思う。もちろん,行列は店の大きさに左右されるが(=席が少なければ待ち時間は長くなる),誰でも時間は惜しいわけで,それでも食べたいと思わせるものがなければ行列は出来ないのである。前者3店に共通するのはみな昔と変わらず「オヤジ」が目の前で作っていると言うこと。ここに来て「大勝軒」と「二郎」は急速に弟子の店が都内〜首都圏に増えているが,あのオヤジがそこでラーメンを作っている限り,やはりその店でそのラーメンを食べたいという衝動は抑えられないのである。特に「さぶちゃん@神保町」には弟子そのものが考えられない(店に弟子が存在できるスペースがない!)以上,あの場所に行くしかないのだ。ラーメンの味的にはもう完璧に『過去のもの』になってしまったが,本来のラーメン&ラーメン店の姿,そして『ラーメン屋のオヤジのあり方』を五感全体で身近に感じることが出来る,都内で最後の貴重な人気店だと思っている。だって「大勝軒@東池袋」や「二郎@三田」と違い,継承する人がいないんだもの・・・。

後者2店は比較的新しい店だ(僕にとってだが)。「青葉@中野」は「とんこつ」+「魚介系」のダブルスープと言う「東京ラーメン」の新しいスタイルを完成させたと言う点から入れた。この店の味を模倣した店が,この数年でいかに多く開店したかと言う事実が,その完成度&影響度を表していると思う。「大喜@湯島」はオーソドックスな「和風ティスト」でありながら,研究熱心なご主人により,現代のニーズにも適応し,且つ世代・経験を問わず万人に薦めやすいラーメンを作ったと言うことを評価したい。・・・などともっともらしく書いてしまったが,要するに茨城に住む僕がまた食べたい〜何度でも食べたい〜でもなかなか食べられないでいる店と言うことですな(笑)。

ただインターネットで情報を集めているようなコアなマニアにとっては,この5店は何を今さらという店だろうと思う。そのマニア向けに言うなら,最近(2002後期〜2003前期)食べて気に入った店は「じゃんず@練馬」「燈の車@狭山」「とうかんや@南砂」「むさし野@松戸」と言うところだろうか。博多系なら「田中商店@足立」で決まり。インパクト系なら「蒙古タンメン」&「二郎系」(「ぽっぽっ屋」とかも含む)と言うことになるのだが,まぁこれは好みによる部分(&その日の体調)の影響が強い店。一般の人はもちろん,マニアでも好みがはっきり分かれるのでオススメと言うにはちょっとツライかな。僕と同じ世代の,「東京懐かし系」に郷愁を感じるような,年季の入ったマニアの皆様にオススメなのが「ブッダガヤ@小田原」,要するに「桂花」なのだが,あの味を個人の店で正しく作るとこういう味になるんだろうなぁと,熊本の本店で食べたこともないのに感じてしまう濃いインパクトある味だった。

ラーメンは『理屈よりもインパクトだ』と常々思っている。 初めて食べた時に「なるほど」と納得する味よりも, 最初は「なんじゃこりゃ〜」と思っても,クセになる味,また無性に食べたくなるラーメンの方が僕は好きだ。 自分の好きなラーメンを語るのに,一般の人を含めた万人にその嗜好を納得してもらう必要はないのだ。 >「どんぶり会議」に投稿(2003/04/29) 

とまぁ,こうして「ドシロウト」である僕の,ラーメンに対する熱き想いはまだまだ衰えそうもないわけである(笑)。

(2003/04/23記)

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