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人に紹介されたラーメンのことなど 【1999/06】

僕は東京に食べ歩きに行くが,その場合情報源は「ラーメン本」「雑誌の特集」「インターネット」と充分にある。昔は東京でも飛び込みで見知らぬ店に入ったりもしたが,今はない。というか,情報が次々と入ってくるのでそれをこなしていくだけで精一杯である。そしてそんな店では「イマイチ」と思うことはあっても「マズイ」と思うことはまずない。それなりにラーメンをわかっている人が紹介する店だからである。ラーメンには何が大事なのかが,わかっているのである。

僕の現在の食べ歩き環境につき,悩みは二つある。一つは「ラーメン好き」でも食べ歩きするほどではない人たち(たぶん世間的には大多数の人たち)がすすめてくれるラーメン店の評価。もう一つは情報のない地域(たとえばわが水戸周辺のような)のラーメン店の選択である。

一般の人たち(僕らがたぶん異常だから普通の人達といってもよい)がすすめてくれる「うまいラーメン」によくあるのが,具で食べさせるラーメン。麺も普通,スープも普通だがその上にのせてある特製の「具」(たとえばカニ,フカヒレ,唐揚げ,うま煮系 etc・・・)が旨いもの。一般の中華料理系の店に行くとこのタイプが多い。観光地でもよくある。もちろん具がうまけりゃそれでもいいのだが,ラーメン好きにしてみれば,麺とスープに特長がなければつらいものがある。うまい「ラーメン」とはいえまい。ましてや具が普通だと,わざわざ食べに来たのが空しくもなる。もてあましてしまう。 「まずいラーメン」に限りなく近づく。

食べ歩きをしない人達のすすめるラーメンは,その人の思い入れが強く出る。平凡なラーメンでも自分の生活範囲の中では「うまいラーメン」なのである。もちろんそれはそれでいいことなのだ。僕にもそんなラーメンはある。ただ評価を求められると困ってしまう。無理してほめたら,それを聞いた別な人に「あんな店がおすすめなの?」と言われたこともあった。人の好みに順番は付けられない。これほどラーメンばかり食べてる僕がすすめるラーメン店だって,満足してくれるのは半分くらいである。百人いれば百人の「好み」があるといっていい。だから紹介はむずかしい。にもかかわらずこんなHPを作ってる僕は何なんだろう?

情報のない地域のラーメン店はたいへんだ。僕は東京にばかり行ってるが,地元を軽視しているわけではない。いつでも行ける水戸周辺の店は,はるか昔より片っ端から食べ尽くしているのだ。だが,文章にしようと思う店はわずかである。別項で述べたような基本的な部分での「まずいラーメン」店が,悲しいことに実に多いのである。スープがぬるい,薄い(薄味ならまだしも),ほぼ粉末スープ,麺の茹ですぎ,麺がのびてる等々・・・。店主の「スープと麺に対するこだわり」が感じられない。「ラーメンなんてこんなもの」と思って作ってるのではないかとよく思う。ラーメンの値段を手抜きの理由にしてはいけない。昔の人は「手間を掛ける事を嫌うな,心入れや親切を,コストの中に入れるな」と説いていた。そもそも,茨城と東京でラーメンの値段に差はあるわけでもないのだ。東京のうまいと言われるラーメンを,一度食べ歩いてみて欲しいとよく思う。

ラーメンに対する「思い」と「研究心」があるラーメンは,僕程度の味覚でも十分感じ取れるものなのである。「手抜き」をすればするほど限りなく「まずいラーメン」に近づくのである。

ラーメンを軽く見る職人に「うまいラーメン」は作れない。同様にラーメンを軽く見る人は「うまいラーメン」にはなかなか出会えないのだ。(1999.6.30)

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